
うちの子、耳が聞こえないみたい……。しつけはできるの?



聴覚に問題があっても、しつけやコミュニケーションをとれますよ。安心してくださいね。
耳が聞こえないとわかったら、しつけはどうしたらいいのか、コミュニケーションが取れるのか、お散歩は問題なく行けるのかなど、心配は尽きないですよね。
伝え方を工夫すれば、耳が聞こえないワンちゃんとでもコミュニケーションを取れますし、安心してお散歩にも出かけられるようになりますよ。
この記事では、次のことがわかります。
- 耳が聞こえない犬とは
- 耳が聞こえない犬のしつけの方法
- 耳が聞こえない犬と接するときの注意点や心構え
耳が聞こえないワンちゃんとのコミュニケーション方法を知って、ワンちゃんも飼い主さんも快適に過ごせるようになってくださいね。
耳が聞こえない犬とは


犬にも耳が聞こえなかったり、聞こえづらかったりする聴覚障害があります。
耳が聞こえない犬には、大まかに以下の2つのタイプに分けられます。
- 先天的な聴覚障害
- 後天的な聴覚障害
それぞれの場合について、どのような特徴があるのかご紹介していきますね。
先天的な聴覚障害
生まれたときから耳が聞こえていない状態の場合、先天的な聴覚障害と呼ばれます。
音を受け取る器官の発達異常などが原因で、被毛の色を決める遺伝子が関係しているといわれています。
生まれたときから耳が聞こえないため、犬自身はそれほど不便だと思っていないようです。
子犬のしつけを始める段階になって、「しつけが上手くいかない」「何度も同じことを教えていても覚えない」という悩みから、耳が聞こえていないと気づくことが多いでしょう。
後天的な聴覚障害
聴覚に問題はなかった犬が、加齢や耳の病気などで耳が聞こえなくなった場合をいいます。
後天的な聴覚障害は、以下のようなさまざまな原因で起こります。
- 加齢
- 病気(甲状腺機能低下症、外耳炎、内耳炎、中耳炎など)
- 薬の副作用
- 脳の問題(脳神経の異常、脳の腫瘍、頭部のケガなど)
また耳とは離れた部分に原因が隠れていることもあるようです。
後から耳が聞こえなくなったときに、どのような特徴が現れるのか知っておくと判断材料になりますよ。
次のような特徴がみられます。
- 動くのを嫌がる
- ちょっとしたことで怯える
- 飼い主さんにべったりするなど依存しやすくなる
- 名前を呼んだり、話しかけたりしても反応しない
- 大きな音がしても気づかず寝ている
私たち人も突然耳が聞こえなくなれば不安になるように、犬も不安になるようです。
聞こえないことで突然のことに怖がる傾向がありますので、驚かせない接し方を意識するとよいでしょう。
耳が聞こえない犬のしつけ方法


ワンちゃんの耳が聞こえない場合、音を使わない方法でしつけやコミュニケーションがとれますよ。
ジェスチャーや表情、口の動きなどでワンちゃんに伝えたいことを表現してみましょう。
音を使わないしつけ方法として、次のようなものがあります。
- ハンドシグナル(手話)を覚えさせる
- アイコンタクトを身につけさせる
- 「おいで」を教える
- 安全なお散歩の練習をする
それぞれの方法を詳しく説明しますね。
ハンドシグナル(手話)を覚えさせる
耳の聞こえないワンちゃんにしつけをするときは、ハンドシグナル(手話)が有効です。
ハンドシグナル(手話)と聞くと難しく感じるかもしれませんが、簡単なジェスチャーで「おすわり」や「待て」などを伝える方法です。
例えば、次のようなハンドシグナルを使います。
- 手のひらを上下に動かす→おすわり
- 指で丸を作る→よし
ワンちゃんと飼い主さんの間でコミュニケーションが成立すれば、どんなハンドシグナルでも問題ありません。
飼い主さんがしやすく、シンプルでわかりやすい動きにするとよいですよ。
「おいで、おすわり、ふせ、まて、よし」の5つの基本コマンドは日常的によく使うものですので、ぜひワンちゃんに覚えてもらいましょう。
ハンドシグナルを使うときのポイント
「おすわり」や「まて」など基本的な動作は、しっかり覚えてもらいたいですよね。
ワンちゃんが覚えやすいように、以下のポイントをおさえてくださいね
- 各ハンドシグナルは、特徴的で分かりやすいものにする
- ハンドシグナルは統一する
- なかなか覚えないときは、オーバーな動作に変える
似たハンドシグナルだと、ワンちゃんが判断しにくくなるので気をつけてくださいね。
また、ご家族がいるならワンちゃんが混乱しないように、ハンドシグナルは統一しましょう。
覚えてくれないときには、ワンちゃんには似ている動きに見えていて区別がつかないのかもしれません。
腕を大きく動かすなど動作を変えてみると、覚えてくれることがありますよ。


アイコンタクトを身につけさせる
アイコンタクトができるようになると、ワンちゃんが飼い主さんを注視するようになるので、意思の疎通がしやすくなりますよ。
ぜひ練習してみてくださいね。
アイコンタクトの練習の流れは、次のようになります。
- ご褒美(おやつやおもちゃ)を犬の視界に入れ、注目させる
- ご褒美を持っている手を、犬と目が合う位置に移動させる
- 目があったら撫でて褒めてから、ご褒美をあげる
- ①~③を繰り返す
ご褒美を持ちながらハンドシグナルを出すと、アイコンタクトと出したハンドシグナルを結び付けて覚えてくれやすくなりますよ。
例えば、人差し指を立てながら他の指でご褒美を持つといった感じです。
そのためご褒美は、小さなものがおすすめですよ。
「おいで」を教える
しつけの基本である「おいで」は、必ずできるようにしましょう。
なにか危険があったときに、耳が聞こえないワンちゃんでは気づくことが遅れる可能性があります。
とっさのときにワンちゃんを守るために、飼い主さんのそばに来るように教えてあげてくださいね。
「おいで」の教え方は、次のような流れになります。
- ワンちゃんと2mくらい離れて立つ
- ご褒美を見せながらハンドシグナルを出す
- ワンちゃんが自分から近寄ってきたら、撫でて褒めてから、ご褒美をあげる
- ①~③を繰り返す
ワンちゃんが確実に寄ってくるようになったら、ご褒美をあげる頻度を3回に1回、5回に1回など徐々に減らしていきます。
さらにご褒美は見せずに、隠して持つようにしましょう。
「ご褒美を持っていないとやらない」ということを防ぐためです。
最終的にはハンドシグナルだけで「おいで」ができるようにします。
飼い主さんに近寄ったら褒められることで、「飼い主さんのそばは居心地が良い」という印象を持ってくれるようになりますよ。
覚えるまでは時間がかかるかもしれませんが、根気強く練習してくださいね。
安全なお散歩の仕方を練習する
耳が聞こえていなくても、お散歩は可能です。
しかし車や自転車が近づいていることを音で判断できないため、飼い主さんが先回りしてワンちゃんを危険から避けるようにしてあげる必要があります。
飼い主さんの指示を速やかにワンちゃんが応えられるようにするためには、「リーダーウォーク」を徹底することが重要です。
ワンちゃんが飼い主さんをぐいぐいと引っ張るような歩き方は危険ですので、リーダーウォークができるように練習をしましょう。
リーダーウォークの練習方法
耳が聞こえないワンちゃんのお散歩に欠かせないリーダーウォークを教えるには、まず室内で練習をします。
練習の流れは、次のようになります。
- ワンちゃんに首輪とリードをつけ、室内を歩く
- ワンちゃんが自由に動こうとしたら、飼い主さんは足を止める
- 立ち止まっているときにはリードを引っ張らず、ただ立ち止まってワンちゃんが戻るのを待つ
- ワンちゃんが飼い主さんの横に戻ってきたら、褒めてからご褒美をあげる
ワンちゃんが自由に好きな方へ行こうとすると首に圧力がかかるため、不快感を感じます。
反対に飼い主さんの横にいれば褒めてもらえるので、横にいた方が良いいことがあると学習してくれますよ。
室内でのリーダーウォークに慣れたら室外で練習して、実際のお散歩でもできるようにしていきましょう。
リーダーウォークと合わせて「おすわり・まて」などの基本動作がハンドシグナルで伝わるようにしておくと、より安全にお散歩を楽しめるようになりますよ。


耳が聞こえない犬と接するときの注意点や心構え


耳が聞こえないワンちゃんと飼い主さんが暮らしやすくするために、いくつかの注意点を把握することや心構えが必要です。
注意点と心構えについて、詳しく解説しますね。
耳が聞こえない犬と接するときの注意点
耳が聞こえないワンちゃんと接するときには、次の点に気をつけましょう。
- 突然触らない
- ワンちゃんの視界にいきなり入らない
- 精神的に不安定になりやすい
耳が聞こえない犬は音の情報が無いため、急に触られたり視界に入ったりすると驚いてしまいます。
びっくりして反射的に噛みついてしまうこともありまので、気をつけてくださいね。
近づくときはなるべく見える位置から近づくなど、驚かせないよう十分に配慮してあげましょう。
睡眠中では特に無防備になっています。
起こすときにはベッドを揺らして振動で気づかせたり、鼻先に手やおやつなどを近づけてニオイで起こしたりするとよいですよ。
また後天的な聴覚障害で耳が聞こえなくなった場合、精神的に不安定になってしまう子もいます。
もともとはおとなしいワンちゃんでも、吠えたり攻撃的になったりすることがあるようです。
耳が聞こえない状態にワンちゃんが慣れるまでは、普段と違う行動をしやすいです。
しかし必ず耳が聞こえない状況に慣れるときがきます。
ワンちゃんの不安な気持ちを受け止めて、優しく見守ってあげてくださいね。
不安そうにしているときは、スキンシップを取って安心させてあげましょう。
耳が聞こえない犬と暮らすための心構え
しつけや接するときは大変かもしれませんが、以下の心構えを持ってくださいね。
- 楽しんでしつけや練習をする
- 積極的にコミュニケーションを取る
- 諦めずに根気強く向き合う
ワンちゃんには音が聞こえていなくても、飼い主さんの態度や雰囲気は伝わるものです。
飼い主さんが笑顔でいてくれることが一番の安心材料ですので、楽しんで積極的しつけやコミュニケーションを取ってくださいね。
褒めるときは大げさなくらい喜ぶなど、ワンちゃんが気持ちよく練習できるような対応をしましょう。
ワンちゃんがハンドサインなどを理解するまでには時間がかかることもあると思います。
イライラしないで根気よく、しつけなど行ってくださいね。
接し方を工夫すれば耳が聞こえなくてもコミュニケーションは取れる
耳が聞こえないワンちゃんでも、音を使わない方法でしつけは可能です。
音を使わないしつけの方法は次の通りです。
- ハンドシグナル(手話)を覚えさせる
- アイコンタクトを身につけさせる
- 「おいで」を教える
- 安全なお散歩の仕方を練習する
あきらめずに練習を続けていくことで、ワンちゃんとのコミュニケーションも取れるようになっていくはずです。
最初は上手くいかないこともあるでしょう。
ワンちゃんと飼い主さんがお互いに暮らしやすくなるよう、楽しんで練習してくださいね。
耳が聞こえない犬との生活では注意点もあります。
- 急に触らない
- いきなりワンちゃんの視界に入らない
- 精神的に不安定になりやすい
耳が聞こえていないワンちゃんにとっては、急に何かをされることはとても驚くことです。
驚いて反射的に噛んでしまうこともあるくらい、恐怖や不安を感じる犬もいます。
驚かせないような配慮やワンちゃんの不安な気持ちに寄り添った接し方をしてあげてくださいね。
耳が聞こえない犬と暮らすための心構えは、次のとおりです。
- 諦めず根気強く向き合う
- 積極的にコミュニケーションをとる
- 安心して暮らせる環境を意識する
どんなワンちゃんであっても、飼い主さんとのコミュニケーションはとても幸せな時間です。
ワンちゃんが安心安全に暮らせるよう工夫しながら、笑顔でたくさんコミュニケーションをとってあげてくださいね。
最初から上手くいかなくても大丈夫です。
諦めなければ必ず飼い主さんの気持ちは伝わるはずですよ。
ぜひ根気よく接してみてくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。